一人のステージ

車内でいつも、Spotifyで曲を聴いている。毎日思い付いた曲を聴いて出勤だ。

そんなある日、婆がイヤ、母の事だ。カラオケに行きたいと言う。

何度も言うから、今日は連れて行こうと決めた。そうだ覚悟がいるのだ。

場所は、カラオケ喫茶だ。カランカラン〜ドアの鈴が、昭和チックで懐かしい。

が、

一瞬で、中のお客さんが振り向く。固まりそうになる私を見て、ママさんが笑顔で、いらっしゃいと言ってくれる。

ありがとうございますと、頭をさげ帰りたくなる気持ちを抑え、案内されたボックスに座る。カラオケ大好き老婆は、ビールを注文する。もう、婆でも母でもどうでもいいのだ。

私は烏龍茶。イヤ待て、シラフで皆んなの前で歌うのか?素人には少し度胸がいる。色んな事を考えていたら、順番が回って来た。

やばい、

少し酔った方が良いが、もう既に遅し。ヨシ!度胸を決める。慣れていないから心臓がドキドキし始めた。カラオケは心臓に悪いのか?いや、そんな事は無い。

ステージに上がれと促された。ステージで歌うのか!4個のスポットライトが、眩しい。私は小さな空間で光照らされている。シミや、シワ、目の下のクマまで、無い事にしてくれる。何の話だ。美容の話では無い。今から、私は歌うのだ。

中島みゆき、りばいばるの、イントロが流れる。もう視線など、どうでも良くなった。

私は1人、中島みゆきの世界に酔いしれた。

 

さあ、婆よ、歩いて帰ろう、、アッ、ビール呑めば良かった、、。