2. たかが、魚、、

前回の続き。

おはようの挨拶、皆んなが顔を揃える。ご飯だよ。何年続いただろう。約5年。ある日、嬢の泳ぎがおかしい。潜水病なのか?沈んでしまった。

その日から、もう一匹の坊が横で、見守りを始めた。朝から夕、24時間ぴったり横で寄り添っている。

今、思い出しながら書いているが、涙が出そうになる。

何故に、ここまで出来るのか?たかが魚、金魚じゃ無いか、、。私は自問自答する。

こんな事が有るのか。ご飯がきたら、上に上がれと、嬢の身体を揺らす。泳げない嬢は、泳ごうと健気だ。大丈夫だよ、沈下性のご飯が有るから、口元に落としてやる。パクパク食べる。原因を調べ尽くすが、

ごめんよ。治してやりたい。

母は無力だ。この時私は母なのだ。

皆んなが、元気だった頃の私の夢は、一緒にこの子達と泳ぎたい事だった。人に言ったら、呆れるか、笑われる。解っている。でも言うどころか、今書いている。呟きは自由だ。

まあ、私の性格は、こんな感じなのだ。回りくどくなってしまったが、子供用プールで、私は水着でと言っても、短パンでTシャツ、私の格好などどうでもいいが、、。

水の中で一緒に泳ぎたい。夏しかない、なんて真剣に考えていたのだ。その矢先、嬢が沈んでしまった。

どうにかしてやりたくて、私の手のひらに乗せ、揺ら揺ら泳がせてあげた。嬉しそうだ。

しかし手の体温で、火傷してしまうから短時間だ。そんな日が何日も続いた。ある日、そっと、腕を冷やしながら水槽に入れた。皆んなが、私の手の指を、小さな口でキスを始めた。嬢は、自ら私の手のひらに、身体をゆっくり乗せてきた。皆んなの声が確かに聞こえた。ありがとう。

寄り添っている坊は、私の指にまとわりつく。抑えきれない感情で、涙が溢れた。