父のお墓参りの帰り道、いつも立ち寄る場所がある。田んぼの真ん中にぽつんとたたずむ、卵の自動販売機だ。ここで売られている3Lサイズの卵は、アツアツのご飯に卵を割ってかけると、それだけでごちそうになる。
この日も母を誘い、早めにレッツGo!
午後になると売り切れてしまうから朝のうちに海岸線を走って、海を眺めながら卵ダッシュだ。
やっぱり海はいいなぁ!綺麗だなぁ〜
アレ?
到着してみると自販機は空っぽ。卵が、全く無い。
卵ちゃんいづこへ?
自販機に貼ってあった生産者さんの連絡先を見て電話してみた。
すると「今から選別するので、1時間ほどで持って行けると思います」と、やわらかな声が返ってきた。
そのあいだに父のお墓参りを済ませ、再び自販機の前で待っていると、バンが到着。中から奥さんがにこやかに卵を運んで来てくれた。

「いつも遠くから買いに来てくださってる方ですよね?」
私たちをちゃんと覚えていてくれていたことが、なんだかとても嬉しかった。
話を聞くと、海沿いの養鶏場は鳥インフルエンザの影響で閉業し、今は山の養鶏場だけが残っているという。
卵の生産も追いつかず、まるで争奪戦。
「ケーキ作りにも卵は欠かせないですからね」と奥さん。
3L卵を2袋、買わせていただき、お礼を伝えると、
「これは半端な数だから売り物にはならないんですけど…」と、袋を差し出してくれた。
「いえ、買わせてください」と言うと、
「遠くから来てくださってありがとうございます」と笑って、お金は受け取ってくれなかった。

そのやさしさに、胸がじんと熱くなった。
ありがとうございます。
帰りの車の中で、母がぽつりと「私も、奥さんみたいに優しい人柄にならないとねぇ〜」

母よ、
「貴方は十分、優しくて頑張り屋さんだよ」と心で呟きながら、クーラーをガンガンに効かせながら海岸線を走っている。